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2024年(令和6年)4月施行の『相続登記の義務化』によって、これまで相続登記を放置していたからといって、いきなり過料(10万円以下)に処されることはありません。
しかし「過料をうけないのであれば、放っておいていいの?」と問われたら、私は「それは、おすすめしません。義務化を機に、相続登記をお考えになったらいかがでしょうか」とお伝えするようにしています。
順を追って、説明します。
まず「相続登記の義務化」とは何でしょうか。
法務局のホームページなどで詳しく解説されています。ざっくり言えば、これまでやってもやらなくてもよかった相続や遺言による不動産の名義変更(相続登記)が、次のようなルールに改められました。
相続・遺言で不動産を取得した人は、そのことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならない。
上記①に「正当な理由」なく違反すれば、10万円以下の過料(行政上の制裁)が適用される。
なぜ、こうしたルールに改められたのでしょうか。
任意とされてきた相続登記が、長年にわたって放置されてきた結果、所有者が不明となって、管理されず利活用できない土地がどんどん増えてしまったからです。ナント…、国土の約22%、九州より広い土地が所有者不明になっているといいます。「相続登記の義務化」は、事態がこれ以上進行しないよう、改善を図るためのルール変更なのです。
亡くなった方が「遺言」を残していたり、相続人の間で「遺産分割協議」がすぐにまとまったような場合には、費用の心配はあっても、登記申請自体はそれほど難しい話ではありません。
しかし、相続人が多数にのぼったり、権利関係が複雑になりすぎていたり、相続人の間で簡単には話し合いがまとまらないことも多々あります。
こうした場合、国は「相続人申告登記の申出」という制度を用意しています。相続登記を申請すべきとされている期間内に、“相続人は〇〇〇です”と登記官に申し出る制度です。これによって、登記の申請義務を果たしたものとみなしてくれます。(具体的な手続き等は後日、通達されるようです)
一番気になるのは、相続登記の申請義務を怠ったときに、どんな場合に「過料」(10万円以下)に処されるのかだと思います。
「義務化」に関する法務省の通達をみれば、令和6年4月の施行当初においては、きわめて限られた事案しか想定していません。
簡単に説明すれば、「あっ、この人は相続登記の申請義務に違反しているな…」と登記官が「職務上知ったとき」に過料の手続きが始まるとされています。
「職務上知ったとき」ときは、次の2つの場合です。
ある相続人が「遺言書」の内容に基づいて不動産Aの登記を申請したが、「遺言書」を読めば、その相続人に対しAだけでなく他の不動産Bも譲る旨が書いてあった。
ある相続人が「遺産分割協議書」に基づいて不動産Aの登記を申請したが、「協議書」を読めば、その相続人はAだけでなく他の不動産Bも取得する旨が書いてあった。
誤解をおそれず解説すれば、要するに、「あなた相続登記の申請にきたけど、遺言書や遺産分割協議書を読めば、他にも登記申請すべき物件(不動産B)がありますね」と登記官が知った場合です。どんな状況なのか、すぐに思いあたりませんが…。
ともあれ、これをきっかけに過料の手続きが始まりますが、そこにいたるまでの手順はまだあります。
まず、上記①や②に当てはまる場合、登記官はある程度の期間を定めて「登記を申請してください」と催告をすることになります(申請の催告)。
それにもかかわらず、期間内に登記が申請されないときに限って、登記官は地方裁判所に対し“過料に処せられるべき事件がありますよ”と通知することになります(過料通知)。
なおかつ、過料に処されるのは「正当な理由」がないのに申請を怠っている場合です。
「正当な理由」とは、簡単に言えば、相続人が多数にのぼり時間がかかる場合や、相続財産をめぐる争いがある場合、経済的な理由で登記費用が負担できない場合などです。
このように、令和6年4月の「相続登記の義務化」の施行当初においては、相続登記をしていないからといって、ある日突然、過料に処されることはありません。過料に処されるのは、上でみたように限られたケースだからです。
では、これまで通り、相続登記を放っておいていいのかと問われれば、それはおすすめしません。相続登記が法律によって「義務化」されたのは事実です。
また、施行当初において、過料に処されるケースが限られていたとしても、今後、法務局の運用がどう変わっていくかわかりません。進展しだいで、厳しくなるかもしれません。
なにより「義務化」以前の問題として、相続登記を放置していたら、不動産が塩漬けのままになってしまい、何一つ前に進みません。土地を売ったり譲ったりするためには、故人の名義から相続人の名義に移す必要があります
私は、相談や問い合わせに際して、こう答えています。
「『相続登記の義務化』によって、すぐに過料に処されることはないと思います。しかし、相続登記をしなければ、不動産は塩漬けのままで何一つ前に進むことはできません。義務化をきかっけに、相続登記をお考えになったらいかがでしょうか」
参考文献:「Q&Aでマスターする民法・不動産登記法改正と司法書士実務 重要条文ポイント解説152問」(東京司法書士会民法改正対策委員会編)/通達「法務省民二927号 令和5年9月12日」
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